日本油化工業

» English » サイトマップ

分析サービス

日本油化工業 » 分析サービス » トラブル分析事例 エンジン

分析サービス

トラブル分析事例 エンジン 編

FCC触媒によるシリンダライナ、ピストンリングの異常摩耗
現象
エンジンのシリンダライナの異常摩耗やピストンリングの折損が発生しました。
分析
ピストンリング、シリンダライナ摺動面のレプリカ(転写フィルム)を顕微鏡観察し、表面状態とFCC(流動接触分解)触媒の残留状況を調査しました。
結果
分析の結果、トラブルのあったエンジンではシリンダライナやピストンリング表面に多数の球状のFCC触媒が認められました。 折損したピストンリング(A船)表面はアブレシブ摩耗が認められました。FCC触媒の径は10~20µmで、一定面積当たり(3cm2)平均で50個のFCC触媒が計数されました。問題がなかったピストンリング(B船)の表面は良好な状態で、FCC触媒はほとんど見つかりませんでした(表)。

A船:折損したトップリングの表面 / B船:問題のなかったトップリングの表面

表:トップリングで見つかったFCC触媒の数(1cm2当たり)


カビの菌糸 分断されていて活性は低い

また、他船において実施した異常摩耗が発生したシリンダライナ摺動面レプリカの観察から、シリンダライナ表面に多数のFCC触媒が埋没していることが観察されました。このことからもFCC触媒がアブレシブ摩耗の原因となっていることがわかりました。


FCC触媒(Al+Si)とその除去(燃料油清浄機の適切な運転)
FCC触媒(Al+Si);VLSFOの使用によりFCC触媒によるトラブルは減少傾向にありますが、依然としてISO 8217の規格値を超えるAl+Siを含む燃料油が散見されます。また、燃料油の硫黄分低減によりシリンダ注油率が減少していることから、FCC触媒に対してこれまでと同様の注意が必要です。


燃料油清浄機の適切な運転;FCC触媒の除去には燃料油清浄機の適切な運転が必要です。清浄機が適切に運転されていればAl+Siの70%以上を除去することができます。
VLSFOは一般的に動粘度が低く、熱安定性が悪い傾向があります。従って、清浄機処理に際しては通油温度管理が大切であり、清浄機メーカが推奨する適正動粘度範囲を超えた過度の加熱は避ける必要があります。


清浄機での清浄効果の確認;清浄機が適切に運転できているかは清浄機の入口と出口のAl+Si濃度の測定をすることにより確認できますので、定期的に確認することをお勧めします。


当社では清浄機の清浄効果の確認試験を実施しています。
清浄機効果確認試験は、【分析に関するお問い合わせ】よりご用命ください。

高カリウム燃料油使用による過給機排ガス側のスケール付着
(上 No.1過給機, 下 No.2過給機)過給機に付着したスケール
現象
2ストローク主機過給機にサージングが発生したため過給器を解放したところ、多量のスケールが付着していました。
分析
燃料油分析と蛍光X線分析によるスケールの元素分析を実施しました。
結果
燃料油分析の結果、燃料油には100ppmを超える高濃度のカリウムが含まれていました。
蛍光X線分析の結果、スケールからはカルシウム、バナジウム、カリウム、硫黄、ニッケル、鉄などが検出されました。スケール中のカルシウムは潤滑油(シリンダ油)に由来する元素ですが、その他は燃料油に含まれていた元素です。
特筆すべきはスケールと燃料油に通常では考えられない高濃度のカリウムが含まれていたことです。カリウムやナトリウムは高温下でバナジウムと化合し、融点が低く、粘着性のある付着しやすいスケールとなり、燃焼・排気系の高温腐食の原因になることが知られています。
この例では燃料油に含まれていた高濃度のカリウムがスケールの付着や過給機のサージングの発生原因であると考えられます。